2008年6月3日火曜日

冷凍肉まん君まで!!

中国河北省の天洋食品の「冷凍餃子」君から農薬が検出されてから、安全で安心できる「食」の確保が注目を集めているわけですが、そこに今度は「毒入り肉まん」が登場するという、大変残念で痛ましい事態となってしまいました(中華まん好きの私としてはちっとも大袈裟ではありません)。



一連の中毒事件が、単なる天洋食品という一工場の、これまた「毒入り餃子」という一種類の食べ物の問題に止まらず、そもそも何故こうも中国社会において悪質食品・有毒食品が出てしまうのかという意味において、事件は更なる広がりと長期化の様相を帯びてまいりました。
  メタミドホスが入っていたこの肉まんは、実は平成18年8月2日に製造されており、1年半後の今年の2月2日が賞味期限に設定されておりました。今年の1月31日と2月1日(いずれも賞味期限内)に肉焼まん計12個を食べた広島県内の73歳の男性が、めまいを感じて2月1日に医療機関を受診した結果、軽症ということで済んだところから事件が発覚したとのことです。実際、事件のおきた広島県では、念のためということで調査したところ、食べ残しの肉まんから0・64ppm、未開封の同肉まんから0・55ppmのメタミドホスが検出されたとのことであります。






~~広島県は、この冷凍肉まんは大阪市の輸入業者ニッキートレーディングが輸入販売したものであることから、この結果を大阪市に通報。大阪市は、早速、同日(平成18年8月2日)製造の冷凍肉まんの在庫品や自主回収分を対象に検査を実施。 この結果、皮や具などから 0・22~0・64ppmのメタミドホスが検出。なお、袋からの検出はないとのこと。


これらの結果から、大阪市と広島県は、2月19日にそれぞれ記者会見を実施。『大阪市の食品輸入会社「ニッキートレーディング」が、中国・山東省の「山東仁木食品」から輸入し、広島県内などで販売した平成18年8月2日製造の冷凍「青島ニラ肉焼まん」から、0・22~0・64ppmの有機リン系殺虫剤「メタミドホス」を検出した』と発表。


なお、「山東仁木食品」は「ニッキートレーディング」のグループ会社である平成18年8月2日製造分の商品は同年8月21日に2500袋(1袋20個入り)が輸入され、大阪府など6府県の10業者に販売された。ニッキー社は今年2月17日までに74袋を自主回収したが、残りは消費されたとみられる(なんてこったー!!)~~

 




私の幼少の頃は、中華まんといえば肉まんとあんまんの2種類だけでして(確か?)、今のように様々な種類の中華まんがあって、その中からお好みで選ぶことが出来るといったことは考えられませんでした。しかも当時は、いわゆる駄菓子屋さんが根強い人気スポットとして君臨しておりまして(高松3丁目には駄菓子屋さんが2軒もありました)、中華まんでも買って食べようぜ!!と言ってのける子供は、当時としてはリッチな家庭・子供の部類に入っていたと思われます(私なんかよく友人と2人で一つを買って半分づつ、というパターンでしたっけ)。



その中華まんですが、これはそもそも小麦粉、水、塩、酵母などをこねて発酵させたふわっとした皮で、具を包んで蒸し上げた「饅頭」でして、中国で「包子」(パオズ bāozi)と呼ぶものに相当するとのことです。豚肉などを入れた肉まん(地方によっては「豚まん」と呼ばれることがある)や小豆餡のあんまんが代表格であるわけですが、最近のピザまん、カレーまん、海鮮中華まん、餃子まんなど、多様な変り種の中華まんも根強いファンをゲットしており、私もたまに食べてみますが、さらに美味しくなったな、今の子供たちは恵まれているな、と感じます。 また、まだ食べていませんが、「○○ロール」と呼ばれる細長い形状の種類もあるみたいです(?)。


その饅頭ですが、中国の明の時代に完成しました、いわゆる「三国志」(学生時代によく読みましたっけ…)の後半の部分に、実はこの「饅頭」の話が出てまいります。そして、この饅頭が、中華まんの原型であるとされております。






~~三国志に出てくる、蜀の国の元首:劉備玄徳の軍師:諸葛亮孔明は、国家3分の計(劉備玄徳の蜀・孫権の呉そして曹操の魏)を一応実現した後、周辺諸国の平定に乗り出す。やがて南蛮に到着すると、その地で「川の氾濫を治めるためには野蛮人の頭を川に投げる必要がある」との言い伝えを聞く。孔明はこの言い伝えに納得がいかず、人の頭を模した饅頭を作り、それを川に投げ込ませる。すると不思議な事に氾濫は治まってしまう。以来川の氾濫を防ぐため饅頭が投げられた。もちろん人の首を入れれば川の氾濫は静まるというのは迷信。孔明は、川の氾濫がいつの季節・時期に起きて、いつ静まるかを知っていたと思われる。同時に孔明は、蛮族を服従させるには武力より、そのような手段を用いた方が得策考えた~~
 



歴史的には(三国志演義はフィクションが多いですが…)多くの血を流さないですむようにといって発案された饅頭、そしてその後の中華まんが、今日では逆に人命を脅かす食べ物として認識され、警戒されてしまったことに、とても憤りを感じますし、加えて悲しいことは、今回の一連の冷凍餃子中毒事件に関して、中国語のインターネットサイトの掲示板で、「日本人の体質は毒に弱すぎ」とか、「日本人の生活環境は甘すぎ、ちょっとした事でも大袈裟に言う」とかの発言が出ていることです。
 


これからもまだまだこういった事件は続くでしょうが、その根本原因はどこにあるのかを私なりに探りますと、中国社会における①言論・報道・表現の自由と②司法の確立・自律・独立の2点が重要でしょう。現在の中国社会では殆ど報道の自由といったものがないため、報道機関として「正しい情報を伝える」「不正に対する監督機能を果たす」という使命が達成されていないですし、むしろすべての報道が党宣伝部にコントロールされてしまっております。そこから例えば、国内でのいくつかの雑誌や新聞社の編集長は頻繁に更迭されているとの事です。


また、司法の独立も依然未発達で、裁判・検察・警察の3作用は党中央ないし地方の政法委員会に属しています。そこから例えば、党幹部と太いパイプを持てば、法律で罰せられる対象外となり得、そこから社会の公正さは失われていき、悪質食品事件が揉み消されているといわれております。これらの二点が克服されませんと、依然として中国製品・中国食品の安全・安心性は世界から認められないのではないでしょうか。
 

今回もまた私は叫びます。冷凍肉まん君、ガンバレ。君も決して悪くない。君の汚名を晴らす為に、僕は君を食べ続けながら、いつでもポワロやコロンボになる覚悟だ。