2015年4月5日日曜日

赤サンゴもそうだけど・・・≪平成26年11月≫


この数年の間に、中国という人口13億人を超える国家が、無秩序にどんどんと膨張し、国外へと溢れ出し、周辺国家を浸食しているがごとき状態が生まれています。
しかも事ここに至っては、中国政府が自国民の経済的な利益を欲する衝動を抑えることも難しくなってきている模様です。それは中国政府自体が、自国民のそうしたオーバーフローをコントロールすることができない局面が多く見受けられるとともに、むしろ不満が政府へ向かわないようにするだけで精一杯と見受けられるからです。その場合のシワ寄せは……、いつも日本をはじめとする周辺国家群に押し寄せて来るのですが……(何と言うこと!!)
このところ、小笠原諸島や伊豆諸島周辺の日本の領海および排他的経済水域に、中国漁船が大挙して押し寄せ、高値で取引される赤サンゴを、堂々と密漁しています。これ自体、日本の法令やEEZを定めた国連海洋法条約に明白に違反する行為ですから、中国政府は、自国の漁民の恥ずべき行為を直ちにやめさせなければならないのが筋というものです(もっとも、押し寄せた大多数の漁船に対する日本側の取り締まりが、後手後手に回ったことは、大変残念でしたね)、そもそも中国政府が、自国民による海洋(?)ルール破りを封じるためにも、毅然とした態度で、取り締まりや摘発を実行しなければならないはずです。
その密漁目的とみられる中国漁船ですが、何でも9月頃から目立ち始めたそうです。10月末からは200隻以上に激増したとの事ですから、日本政府は中国側に対して、再発防止を強く求めていくとともに、もし誠意をみせないのならば、中国に対し、より高いレベルでの強い抗議が必要でしょう。
また、さらなる課題としては、罰則の強化があるでしょう。と言いますのも、逮捕された密漁船の船長が釈放時に払う「担保金」が、密漁の「もうけ」と比べて著しく低いことが、確実に犯罪の抑止効果を失わせているからです。担保金の具体的な金額は非公表との事ですが、違反の類型、程度、回数などを考慮して金額が決まるそうで、関係者によると、EEZでの無許可操業は400万円前後、立ち入り検査拒否は数十万円が相場だそうです。密漁の対象となっている赤サンゴは「宝石サンゴ」と呼ばれ、とりわけ日本産は品質が良く装飾品として中国や台湾の富裕層に人気が高いそうでして、日本珊瑚商工協同組合によると、卸値はこの10年で約5倍に上昇し、平成24年の平均取引額は1キロ約150万円に上るとの事です。密漁を繰り返し、数千万円の荒稼ぎをするケースも珍しくないとのことですから、担保金の額が、密漁者が得る違法利益に比べて低すぎるのは極めて問題と言うことが出来ますね。
密猟漁船団は、小笠原諸島の父島からも見えたりして、父島の皆さんは恐怖感を抱くとともに、彼らの上陸などの不測事態に備えて警戒態勢を取っているそうです。当然のことながら、島民の漁業やホエールウオッチングなど観光産業への影響が懸念され始めています。島民の生活を脅かす由々しき事態ではありますが、海上保安庁は水産庁とともに、5隻の船舶により密漁の警戒に当たるのが限界だそうです。そこから想像できることとして、これほどの数の漁船団となると、単なる密漁とは考え難いこと、また、中国から2000キロ以上も離れているため、燃料代だけで300万円もかかること、さらに、既に海保により密漁と検査忌避罪で5隻ほど拿捕されているにもかかわらず、漁船団はなお出没海域を拡大し活動を続けていること、次に、存在を誇示するかのように地元漁船に近づいて来ること、そして、日本政府は中国側に密漁船の抑止を求めているのにも拘らず、中国側による密漁抑止の動きは消極的であること等から、むしろ、中国当局が関与しているのではないかということです。
ある意味、尖閣諸島との絡みで、海保の機動力を冷徹に試す為に、尖閣から離れた小笠原海域に大漁船団を投入したのではあるまいかということです。いかに海保が勢力を増強しても、大量の漁船を使った中国による攪乱への対処は難しいと言えます。あたかも、中国の要求を受け入れて尖閣の領有権問題の存在を認めなければ、日本の海を混乱に陥れるという脅迫行為とも受け取れます。
こうしてみますと、有事体制の整備は不可欠であるということが出来ます。しかも、有事に発展する前に対処する能力を持つことが極めて重要です。密漁船や不審船の対策において、広範囲の監視と機動的な展開が可能な自衛隊と、警察権を持つ海保、警察の連携体制を作ることが必要で、いわゆるグレーゾーンに対応する法整備が求められます。 根本的に日本の沿岸警備体制の見直しを進めなければなりませんし、その点は既に、海保と海自はソマリア沖海賊対策において、自衛艦に海上保安官が同乗し、法の執行に備えた連携体制をとっているところです。外国船の密漁に対しても、自衛艦に海上保安官が同乗する施策をとれば、機動的に海洋警備を行うことが可能になるでしょう。さらに、政府が進める地方創生の中核に離島の振興を置いて、インフラや社会システムの整備を進めることで、住民による監視を行き届けさせ、他国が侵入できない環境を作ることも重要です。
赤サンゴも、もちろんですが、国家の総力を挙げて、島そして海を守る体制整備が急務な昨今です。
【担保金】 日本のEEZで無許可操業などの違反により逮捕された外国人船長が釈放条件として支払う事実上の罰金。支払いを保証する書面の提供があった場合も釈放される。平成8年に日本が批准した国連海洋法条約に伴い制定された漁業主権法に規定されている。
【赤サンゴ】主に日本近海の水深100メートル以上の深海に生息するサンゴ。硬質で磨くと光沢が出ることから「宝石サンゴ」とも呼ばれる。ネックレスや数珠に加工されるほか、大きく完全な形のものは観賞用になる。赤色が濃いほど価値が高く、中国ではアクセサリーのほか、魔よけなどとしても用いられている。