2015年4月5日日曜日

危険ドラッグの撲滅に向かって≪平成26年7月≫


624日午後8時前、本区西池袋1丁目の路上で、乗用車が歩道に突っ込んで暴走し、歩行者を次々とはねて、その結果、7人が負傷しそのうち20代の女性が死亡、女性2人、男性1人がそれぞれ重傷を負うという、大変ショッキングな事故が起こりました。乗用車は、歩道を数十メートル走行し、ポストをなぎ倒しながら人をはね、電話ボックスに衝突してようやく停車したのです。
目の前にある交番の警察官が、急いで駆け付けると、運転席には意識がもうろうとした状態の男がいて、やがてこの事故の直前に、現場付近の店で購入した脱法ハーブを使用したことが原因だということが分かりました。いわゆる脱法ハーブで意識がもうろうとした状態で車を運転していたわけです。実際、事故を起こした容疑者自身、「脱法ハーブを買った店はスマートフォンで検索し、事故を起こしたのはハーブのせいだとすぐに分かった」と話したそうです。
まさに夜の繁華街の歓声が悲鳴に変わったわけですが、私自身、事故現場の道を通って、すぐ近くの三菱東京UFJ銀行池袋西口支店に用足しに行くことがあり、時間帯がずれていれば……と思うと、ぞっとしてしまいます。目撃者の皆さんの話も、例えば「もう少しで巻き込まれるところだった」「猛スピードで車が突っ込んだ。動かない女性もいて、みなどうしてよいのか分からない状態だった」「秋葉原の通り魔事件のようなものが起きているのかと思った」等の、声を震わせての数々の証言が寄せられています。

 そもそも脱法ドラッグとは何なの?と言ったこともよく聞かれます。
 
 脱法ドラッグとは、麻薬などと同様の効果があり、違法と合法の境目にある薬物の総称だとされています。ここには麻薬取締法や薬事法で規制されていない薬物のほか、合法を装った覚醒剤や麻薬、薬事法上の指定薬物も含まれるとのことです。このうち、問題となっている脱法ハーブは、植物片に薬物をしみ込ませ、たばこのように点火して吸引したりするものです。お香などを偽装して販売されるのが一般的であり、医薬品としての規制も免れているケースが多いと言われています。

さて、この凄惨な事件をふまえて本区では、75日、池袋駅西口広場にて、事故の引き金となったとされる脱法ドラッグの撲滅を目指す集会を開催し、違法薬物対策への協力を日本中に呼び掛けたところです。
集会の冒頭、今回の事故の犠牲者に黙祷をささげ、出席者のお一人の田村憲久厚生労働大臣は、脱法ドラッグがお香などと称して販売されることについて言及しつつ、「人体に影響がある薬物を吸引目的で売っている。決して許してはならない」「薬事法の取り締まり対象となる違法薬物の指定を推進していく必要がある」「警察庁と協力して危ない薬物を売っている店にアプローチしていく」とおっしゃり、販売店への取り締まりを強化する意向を示してくれました。
私も、区議会で可決された撲滅宣言を報告させてもらいました。その後は、事故現場に献花し、参加者たちが長い列をつくって、繁華街をパレードしました。
もっとも、依然として脱法ハーブを含む薬物の吸引が原因とみられる交通事故は後を絶ちません。警察庁によれば、脱法ハーブを含む薬物の吸引が原因とみられる事故は、平成24年に1919人が摘発され、それが平成25年には3840人に急増しているとのことです。また、脱法ハーブを含む脱法ドラッグが絡んだ110番通報は今年16月に前年比65件増の264件。719日だけでも34件に上ったそうです。ここから推測すると、乱用者自身が、脱法ハーブの効果を軽視して、大丈夫などと安易に考えて車を運転するといった事情があるのではないでしょうか。せっかく交通事故全体の発生件数は減少を続けているのにもかかわらず、意図的な暴走運転は減って、脱法ハーブなど先の読めない事故が増えていくというのはツライですし、そうなると今後は、事故の危険回避方法を歩行者などに伝えることが重要になってくるでしょう。こうなってくると、ノホホンと歩道を歩いたり、ボケッと信号待ちすることも、オチオチできません。
脱法ハーブを含む脱法ドラッグをめぐっては、規制対象外の新たな成分を使った新種が次々と出回るので規制が追いつかない、といった厳しい事情もあるでしょうが、私としては、国や自治体は、毅然として、迅速に、それらに対する取り締まりを強化してもらわないと困る、というのが率直な思いです。
そうした中、東京都では71日、改正薬物乱用防止条例が施行され、そこでは、薬事法上の違法ドラッグ以外に、幻覚作用が強い8種類の薬物を知事指定薬物として新たに摘発対象とするとともに、使用や所持など購入側も規制対象としました。また、東京都はついこのあいだ、厚生労働省と警視庁と連携して、都内で脱法ドラッグを販売する店舗に対して、約100人態勢で一斉立ち入り検査を実施しました。池袋の暴走事故で押収されたものと同じとみられる薬物も11店舗で見つかったとのことで、店から任意提出を受けた東京都は今後、成分分析など鑑定を進める模様です。こうして都は脱法ドラッグの規制の迅速化を図り、最新の成分分析機器の導入も検討しており、速やかに危険な薬物を排除するため、どんどん規制指定を進めていく方向で調整しているとのことです。加えて都は、インターネットでの販売業者が「ゆうパック」を悪用するケースが増えていることから、日本郵便に対し、脱法ドラッグの販売が疑われる業者からの依頼は受けないことなどを要請する方針を明らかにしています。これについて、日本郵便は「悪用されても確認できない状況なのは確か。社会的要請が高まれば検討したい」と話しているそうですが、すぐにでも動き出してほしいものです。
一方、警視庁は、脱法ドラッグ総合対策本部を発足させて、販売実態の把握や摘発の強化、鑑定の迅速化などに全庁をあげて、積極的に取り組むことを確認しました。東京都薬物乱用防止条例に基づく脱法ドラッグ店への立ち入りについて、東京都職員ら以外に、警察官もできるように条例改正を働きかけていくといいます。
他方、厚生労働省では、ハーブなどに付着した成分に、幻覚や興奮など中枢神経に影響を与える効果が確認された場合、薬事法違反にあたるとの認識を強めて、取り締まりを強化する方針を固めました。その狙いは、禁止する指定薬物に定める前に業者の摘発が可能になり、指定されると別の商品が出回る、いわゆるイタチゴッコに歯止めをかけるところにあるとか……。
この度の暴走事故を切っ掛けとしたこの問題について、まずは国や東京都が強力なリーダーシップを発揮してもらいたいですし、本区としても何ができるかを明確にして、区民の皆さんのご協力を得つつ取り組む姿勢が大切ですね。