2014年4月2日水曜日

2020東京五輪≪平成25年12月≫

 97日、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスで2020年夏季五輪の開催都市を決める国際オリンピック委員会総会が行われ、開催都市が東京に決定。東京は決選投票でイスタンブールを破り、1964年以来2度目となる開催を決めました。日本での五輪開催は1972年の札幌、1998年の長野の冬季五輪と合わせて4度目の開催となります。

これを受け、7年後に向けて日本は大盛り上がり。その発表の瞬間、早朝にも関わらず、ツイッターやフェイスブックなど、SNSのタイムラインは東京五輪の話題一色となりました。そうした歓喜の声と同時に、7年後の自分や自身の子供たちの姿を思い描くコメントも多く見られました。自国開催の決定は、普段スポーツにあまり関心のない人の胸をも躍らせ、多くの日本人を高揚させたのではないでしょうか…。

このように五輪は、私たちに夢や希望を与えるイベントであります。ですが一方で、気になるのが経済効果でしょう。ニュース記事を読むと、3兆円から150兆円まで様々な経済効果を試算する数字が飛び交い、頭が少々混乱気味の人もいるのではないでしょうか。
結局、2020年の東京五輪は日本の景気にどういう影響を与え、私たちの暮らしにどのような変化をもたらすのでしょうか…?。例えば、地下鉄が24時間運行になるなど、東京のインフラが再整備されると、地方経済がさらに疲弊するのではないかと考えます。また、五輪特需の建設ラッシュが予測されますが、被災地の復興もあるため、建設労働者が足りていない状況も事実です。資材もそれほど十分ではないので、材費が高騰する可能性もあります(う~む、豊島区としても頭が痛い…)

実際、東京都は約4000億円の五輪基金を積んでいますが、日本は赤字国家であり、財政赤字が膨らめば、金利高騰につながります。そこで大事なのは、五輪開催を準備するにあたって、地方の疲弊や被災地の状況を決して忘れてはいけないということではないでしょうか。五輪開催を機に温泉や観光資源といった日本の良さを世界に知ってもらい、国土の狭さを逆に利用して、東京から全国各地の観光地へ導くような取り組みを考えることも大事ではないかと思います。

また、2012年のロンドン五輪も日本と同様、コンパクトな五輪をうたっていました。
そのロンドンは五輪開催後、公共事業の増加により、五輪までの数年間は成長率の増加が望めたはずですが、英国は五輪の直前まで、3四半期連続でマイナス成長を続けていました。五輪開催時の3カ月のみ、年率3.0%の成長を見込めました。ですがその後、失業率が改善したわけでもなく、大きく経済成長を遂げたとも言えません。

五輪全体の経済効果は約26000億円で、ロンドン五輪の政府の歳出額は約14000億円だそうです。「半径8キロ以内での開催」とうたう東京はロンドンよりもっとコンパクトになるので、やはり経済効果もそれほど期待できないと考えられます。

では2020年の五輪を、私たちはどのような位置づけで捉えれば、有意義なものになるのでしょうか。五輪の経済効果云々という議論をするよりも、せっかく開催できるのですから、成熟した社会の中での五輪の在り方にこだわればいいのだと思います。例えば、日本が避けて通れない「超高齢化社会を見越した五輪の在り方」といったコンセプトもありでしょう。

前回の東京五輪にはなかったパラリンピックを開催するのですから、地下鉄やバス、五輪施設などのインフラにバリアフリーを施すということも1つの手でしょう。世界各国から集まるパラリンピックのアスリートも移動しやすいし、「世界一高齢者が住みやすい街」を目標にすれば、高齢者が街に出やすくなるなど、五輪閉幕後の超高齢化社会にも貢献できるはずです。これは、1つのロールモデルとして世界に発信できるでしょう。

そして、せっかくのスポーツの祭典なのですから、これを契機にスポーツインフラも平準的に整えることができたらいいなと思います。子供たちへのスポーツ育成はもちろん、高齢者向けの運動施設やサービスなどを今以上に設ける。そうすることで、多くの人が運動をして健康寿命が延びれば、医療費や介護費用の軽減にもつながるはずでは…。

そのためにも、五輪後は安価な使用料で運動できるような、ランニングコストを抑えたスポーツ施設やサービスを整えることが大事です。使用料が高くて誰も利用せず、毎年赤字が膨らむような施設では、せっかく五輪開催の機会をつかんだのに本末転倒です。

 1998年の長野冬季五輪では、施設整備などの巨額資金がかかり、県債残高を抱えてしまいました。その時に建設されたスケートリンクなどの関連施設の維持費は、毎年9億円かかるそうです。しかし、実際の施設収入はわずかに足らず。その差額は自治体が負担しています。このような例を見ても、五輪後の活用を見越した施設建設を期待したいですね。

 また、子供たちにとって、五輪は夢や希望が詰まった未来を想像できる貴重な機会です。そのワクワクした気持ちは、きっと大人になっても忘れることなく、次の世代へと引き継がれるような動機づけにもなるでしょう。

 そして、超高齢化社会を迎えるこのタイミングの五輪開催だからこそ、これを契機に、私たち大人も未来を描けるような五輪開催を切に願います。

東日本大震災の復興の過程を通して、スポーツの力は我々に元気や活力を与えてくれました(最近では楽天イーグルス)。これからの日本の真の復興のためにも、世界最大の祭典と言えるオリンピック・パラリンピックの力が必要となってくるでしょう。そして、この大会開催を通じて、アジア近隣諸国及び、世界中の国々から寄せられた多大なる支援に対して、感謝の気持ちを示していくこともできます。

また、様々な困難に直面している世界の人々へ、日本人がその価値を再認識した「絆」を共有することで、エールを送りたいと思います。平和な社会の実現に向けて、手を携え、その実現に向けて貢献していきましょう。

世界中から訪れるアスリート、競技関係者、マスコミ関係者、観客など多くの来訪者を、食事や宿泊、輸送や安全対策などの万全の準備と、日本ならではのおもてなしの心をもって迎えたいと思います。伝統的な日本文化のみならず、日本が持つ革新性や最先端の科学技術を体感してもらい、日本の存在感・素晴らしさを世界に示していけたら素敵ですね。