2014年4月2日水曜日

学校の「評判」には振り回されないで≪平成25年2月≫

 もうすぐ3月の卒業シーズン、そして4月の入学シーズン到来ですね。
 既に新しい学校が決まって入学される皆さんはおめでとうございます。また、これから学校受験という皆さんにおかれては、どうかベストを尽くして頑張ってください。

さて、この学校についてですが、各人におかれては、様々な選択の理由があった事でしょう。それは、公立だから学費が低廉だとか、自宅からの通学距離が近いからとかは勿論、その学校の「評判」なども気になったはずですよね。

「評判」と言いますと、ある意味つかみどころのないところがありますが、ありていに言えば、この学校は偏差値が高くて、卒業生も良い大学・企業に進学・就職しているとか、この学校はスポーツに強くて、プロスポーツ・オリンピック選手を数多く輩出しているとか等々の積み重なったものとでもいえるでしょうか…。勿論、先生や生徒の醸し出す雰囲気や、学校それ自体の校風によって自然と創られているものも含まれるでしょう。

では、その評判は、どのようにして保たれるのでしょうか?

  平成24年年1223日。桜宮高校二年生のバスケットボール部主将の男子生徒が自殺するという大変痛ましい出来事がありました。彼が書き残した手紙には「教師による体罰が辛い」と記してあり、教師の生徒に対する体罰の問題が指摘されました。橋本大阪市長の声により、桜宮高校では問題が起きた体育科の入試が中止になり(その代わりに普通科に振りかえという代替案が採用され説明会も無事行われました)教師も総入れ替えするという話題も浮上しています。

この問題はまたたく間にマスコミを通じて全国に広がり、大阪の様々な中・高等学校の運動部顧問が集められ、元プロ野球選手の桑田真澄さんの講演会の中で体罰について指導されるなど、最早日本中の話題をさらう問題となりました。

  バスケットボール部主将の男子生徒が自殺する前の、平成23年年9月ごろ、バスケットボール部の顧問による体罰に関する情報が教育委員会に送られてきたそうです。教育委員会は自ら指揮を取り学校を調査しましたが、その調査の仕方というのは顧問に話を聞くだけで、部の生徒の証言を取ることはしなかったとのこと。「調査の手法が間違っていると思わない」と、永井哲郎教育長が述べていました。その後教育委員会は男子生徒自殺後の会見にて、遺した手紙に書いてあった「体罰が辛い」という文章については言葉を濁し、最終的には、「自殺と体罰の因果関係は明白ではない」と判断したとのことです。

  「自殺する以前は体罰のことは分からなかった、そのようなシグナルに気付けなかった」と桜宮高校の校長は生徒の死を悼み、悔やんではいましたが、学校側は自殺後間もなく男子生徒の遺族に対して「バスケットボール部の新人戦に出場してもいいか」などと尋ねたそうです。

今月5日には(これも賛否両論ありそうですが)活動停止中に体罰が確認され、更に常態化していたことが判明した男子バレーボール部、サッカー部、そしてバスケットボール部は顧問を交代し、体罰が確認されなかった他の部に対しても体罰をしないという誓約書を提出させることを前提に運動部の活動を再開させたそうです。

  こうして事件のあらましを見ていると、教育委員会と学校の対応は、後手後手に回ってしまっていますね。遺された手紙に体罰の事が明記されていることそれ自体の受け止め方の甘さ、問題があった部活を生徒の安全が確保できない状況で再開させることの甘さ等々、そこには、教師と生徒の信頼関係がきちんと再構築出来るまで部活動を停止させ、徹底的に指導してよりよい部活の場を提供するといった毅然とした態度が見受けられません。

  「評判」を落としたくないから…?

自分の学校で、私の母校で、体罰があった…。そのせいで勝てる試合にも出場出来ず負けてしまう…。そのせいで職場の中で笑いのネタにされている…。

 
 そもそも桜宮高校とはどのような学校なのでしょうか。

 知性・敬愛・活力を校訓としている大阪市立桜宮高校はサッカー場やテニスコートのある公園が近くにあり大変自然に恵まれた環境に位置しています。水泳の中野悟選手や女子柔道の立野千代里選手など、日本代表の選手をオリンピックにたくさん輩出しており、彼らのオリンピック出場記念碑も校内にあるそうです。部活も充実しており、文化系の他、野球やサッカーをはじめボートや剣道など14の運動部があるとともに、校内には、トレーニング施設や選手の動きを分析できるハイスピードカメラを設置した施設などがあります。

また、普通科、体育科、スポーツ健康科学科の他に普通科自立支援コースという、知的障害者を受け入れる枠を別に用意してあり、知的障害のある生徒たちが、社会的自立を図れるよう一人一人の教育的ニーズに応えた指導をしているのも特徴です。

 問題の起きたバスケットボール部は、強豪ぞろいの校内部活動の中でも別格扱いの強さだったそうで、その成績も凄いものがあります。全部はここに書ききれませんが、例えば、平成18年の全国高校総体(インターハイ)大阪大会5位、平成20年と平成22年の全国高校総体大阪府予選会で優勝という成績があります。

  全体として「スポーツに強い」という評判を得ていて、その中で、特に力をいれていて別格扱いしていたバスケットボール部でそのような事件が起きてしまうと、まさに「評判」に関わりますね。

今まで築き上げてきた栄光・実績・「評判」が一気に崩れてしまう…。

 「評判」に振り回される事無く、むしろ全てを認め、改善に努め、長い時間をかけて立て直すことが本当の良い「評判」に繋がるのではないのでしょうか…。