2014年4月2日水曜日

生活保護に一石≪平成25年4月≫

 いよいよ新年度がスタートしました。
 季節は陽春の頃。
 暖かな日差し。
 草木も芽吹く。

まさに心弾む季節の到来……。この時期、就職や退職そして進学などで新しい環境での新生活が始まる方も多々いらっしゃるかと思います。かくいう私も、期待と不安の入り混じったこの時期を懐かしく思う一瞬があります…。
あの時期に感じ、思ったことを思い返して、今年度も励んで参りたいですね…。

  ところで、最近ちょっと気になる事とは言えば…。
 生活保護費や児童扶養手当をパチンコ等のギャンブルで浪費することを禁止し、市民に情報提供を求める兵庫県小野市の「市福祉給付制度適正化条例」ですね。

一部の報道によれば、なんでもこの条例、市民に対し、 受給者の「浪費情報」を市に提供することも求めており、法律の専門家からは「人権侵害を招きかねない」と懸念する声が出ているとの事です。4月1日に施行されるこの条例は、国が明示していない保護費の適正な使途にまで踏み込んだ内容で、この試みは受給者のプライバシーをどう守るかなど、今後の運用の在り方で他の自治体に与える影響を考えると…、注目しちゃいますね。

 【福祉給付制度適正化条例の骨子】

・生活保護や児童扶養手当などの適正運用と受給者の自立した生活支援を目的とする。

・受給者は能力に応じて勤労に励み、節約し、生活の維持・向上に努めなければならない。

・市民は、受給者が給付金を不正に受けたり、パチンコ、競輪、競馬で浪費したりしているのを知れば、市に情報提供する。

  この条例に罰則規定はないものの、一部の人や弁護士会から「監視社会になる」と心配する声もあります。その一方、小野市にこれまで寄せられた1900を超える意見のうち、6割が「パチンコは生活必需品ではない」などと条例に賛成する動きがあったとか…。

 いずれにしても、市の取り組みは全国に波紋を広げるのでは…?
 

 さて、そもそも生活保護費受給者の方がパチンコなどのギャンブルが可能なのでしょうか、ということです。

 この点、生活保護法60条では次のようにうたっています。

「賭け事やパチンコなどの遊びを慎んで、計画的に生活保護費を使わなければいけない」
 

 この「慎む」という言葉から全面的に禁止されているという事ではないようです。

 しかし、平成25年、兵庫県で「生活保護者ギャンブル禁止」の条例が議会に提出されました。可決・成立してはいないようですが、この条例は、「生活保護受給者がパチンコ・パチスロ・競輪・競馬といったギャンブルに生計が維持できなくなるまで投資することを禁止」する条例です。発覚した場合は、生活保護費の見直しなどの調査がはいる事になっているそうです。

 誤解を招かないよう説明させて頂きますが、もちろん「生活保護者がギャンブルをしてはいけない」という決まりはありません。

 しかし、生活保護費は、「最低限の生活を送るのに必要な金額」として支給されているので、本来ギャンブルといった遊興費が手元にあること自体が不自然というのが現実です。

 ちなみに、パチンコ経験者の意見からの引用文です。

 「条例に否定的な意見を述べている人のなかに、酒タバコといった嗜好品への金銭消費や宝くじ購入といったものと一緒くたにしている人がいますが、このような人はパチンコ・パチスロをやったことのない無知な妄言だといわざるを得ません。パチンコのへ金投資額、は負けの日であれば1時間で2~3万円程度ととらえてもらっていいと思います。さらに当然1時間でやめるわけもないので、1日で5~10万円の負けはザラです。生活保護費を受給している人がこのような投資に耐えうるだけの資産があること自体不自然です。」

 このような水準でパチンコなどのギャンブルを生活保護費で行っているようであれば「慎む」、「維持できない」に該当するでしょう。

 そもそも、生活保護とは日本国憲法25条の「生存権」の理念に基づき国民の「健康で文化的な最低限度の生活の保障」のために制定された経緯があります。

 今回このような条例が制定された背景には、「健康で文化的な最低限度の生活の保障」と「自立を助ける」という生活保護本来の目的が果たせていない場合があることに対する市民からの疑問があるのではないでしょうか?

 厚生労働省によると、平成23年度の生活保護費の不正受給件数は、全国で約3万5千件、計約173億円で、ともに過去最悪でした。

 「監視強化ではなく見守り」

 「不適切な受給とは何かを明らかにし、自立支援という生活保護のあるべき姿を明確にすることで、受給者への社会の厳しい目を和らげる」

 現在の生活保護制度の仕組みに一石を投じる条例になれば良いですね……。