2014年3月31日月曜日

高校教科書検定の評価は?≪平成24年4月≫

 ようやく来年(平成25年度)の春から高校で使われる教科書の検定が終わりました。
 まずは関係各位の御苦労に感謝申し上げます。
 もっとも、今回の検定もそうですが、所々の記述に関しては、相も変わらず文部科学省の検定基準に疑問の声が上がっているところです。

まず残念で仕方がないのが、大阪府などが進めている国旗掲揚や国歌斉唱の義務づけを「強制」と表現した教科書が合格してしまった事でしょう。学習指導要領に基づく教育を行うための取り組みを「強制」とする記述は問題であって、今からでも記述を正すべきだと思います。
例えば、実教出版の日本史Aでは国旗国歌法を当初、「政府は、この法律によって国民に国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし現実はそうなっていない」と記述していました。それが、検定では「しかし」以下を「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と修正し、これがパスしたとの事です。特定こそしていませんが、教職員に国歌斉唱時の起立を義務づけた大阪府や大阪市の条例化の動きを指すことは明らかでしょう。文部科学省は「誤った記述とまでは言えない」としていますが、何よりも生徒に誤った見方や印象を抱かせる恐れが強く、不適切な表現といわざるを得ません。学習指導要領は、国旗、国歌への正しい認識を生徒が身につけるよう指導を義務づけています。また、最高裁も式典で教師に起立を促すよう命じる職務命令を「合憲」とした判決を下しています。にもかかわらず、教科書がこんな記述では、生徒に正しい指導など出来るはずがありません。文部科学省が行っている指導との矛盾も明らかで、教育現場への影響が心配されます。

 一方、とっても評価出来るのが、山川出版社が日本史Aで南京事件の記述を見直した事です。犠牲者数に諸説あることを紹介し「その実情は明らかではない」としていた現行記述に、「学者のあいだでは、30万人説は誇大な数字と考えられている」と付け加えた事です。これは中国の主張に明確に疑問を呈したもので、よくぞ正論を記述してくれたと思います。他社の教科書が依然として「南京大虐殺」「大虐殺」といった表現で検定合格している中で、最新の研究結果を取り入れた同社の記述には注目したいですね。

 普天間飛行場の移設など長年揺れ続ける沖縄の米軍基地問題。
 今回も現代社会など21冊で取り上げられていますが、多くの教科書で「沖縄には在日米軍基地の75%(または74%)が集中」という記述があります。しかし、防衛省によりますと、在日米軍の施設・区域の総面積は平成2411日現在、102709ヘクタール。そのうち沖縄は23176ヘクタールで全体の22.6%。「75%」という数字は日米地位協定に基づき米軍が使用する自衛隊などの区域を除いた「米軍専用基地」が沖縄に占める割合であり、教科書で一般化した「75%」の記述は説明不足で誤解を招く表現といえそうです。
 拓殖大学の恵隆之介客員教授はある月刊誌の中で「沖縄の基地被害をことさら強調するため、左翼活動家を中心に、好んで使われている数字であり、文科省は検定意見を付けるべきだ」と指摘しています。

領土問題については、地理の7冊すべてが島根県の竹島と沖縄県の尖閣諸島を掲載するなど、現行の教科書に比べ、取り扱う発行社が増えてくれました。現代社会と政治・経済では、現行版は竹島、尖閣とも31冊中20冊で割合は7割に満たないですが、合格教科書は竹島が13冊中10冊、尖閣は13冊中11冊が記載し、7割を超えています。
学習指導要領の解説書は、具体的にどの領土を扱うか明示していませんが、229月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件などが影響しているのは明らかでしょう。

教科書レベルの動きとはまた別に、新たな動きが教材レベルでありました。
それは、日本が対米戦争を始めたのは「自衛(安全保障)」のためだったとする連合国軍総司令部(GHQ)最高司令官、マッカーサー元帥の証言が東京都立高校の教材に掲載されたことです。
日本を侵略国家として裁いた東京裁判を、裁判の実質責任者だったマッカーサー自身が否定したものとして知られる同証言を、公教育の教材が取り上げるのは初めてとのことです。これこそ生徒に先の戦争を多角的に捉えさせ、考えさせる機会として期待される動きですね。昭和の戦争での日本を「侵略国家だった」と断罪した東京裁判に沿う歴史観は、「日本国民は…政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」で始まる憲法前文にも反映され、「軍隊を持たず」という国際社会でも異質な国家体制の前提となってきました。歴史教育は「贖罪(しょくざい)史観」一辺倒となってしまい、子供たちの愛国心を育んできませんでした。その歴史観が絶対ではないことを示すマッカーサー証言の公教育での教材化は、戦後日本の在り方に一石を投じるものと言えそうです。
そもそもこの証言は、朝鮮戦争で国連軍やGHQの司令官職を解任されたマッカーサーが1951年5月3日、米上院軍事外交合同委員会の公聴会に出席し、朝鮮戦争に介入した中国への対処に関する質疑の中で言及したものです。連合国側の経済封鎖で追い詰められた日本が、「主に自衛(安全保障)上の理由から、戦争に走った」と述べたのです。
証言は、江戸時代から今日まで約400年間の東京の歴史を盛り込んだ「江戸から東京へ」と題する教材に英文で掲載されます。都立高に限らず、他の学校でも取り上げてほしい貴重な証言です。現代史の授業は、戦勝国が敗戦国日本の戦争指導者を一方的に裁いた、極東国際軍事裁判(東京裁判)に基づく歴史観によって行われる傾向が強いと言えます。多くの教科書も、満州事変から日米戦争までの一連の出来事を日本の「侵略」と捉えた書き方となってしまっています。
しかし、東京裁判の判決は必ずしも歴史の真実ではありません。
いわゆる「南京大虐殺」をめぐって、旧日本軍が約20万人の中国軍捕虜や市民を殺害したと認定されたが、その後の実証的な研究により、「20万」が誇大な数字で、「大虐殺」が中国側の反日宣伝だったことも明らかになっています。東京裁判では、インドのパール判事が日本の無罪を主張し、事後法で裁いた裁判自体を批判したことは有名です。
社会科の教師はこれらに関する文献も調べ、何よりもバランスのとれた授業を行うべきでしょう。現行憲法はマッカーサーらGHQが草案を作り、これに日本側が修正を加えたものですが、子供たちはあまり知りえてはおりません。その原因の一つとして挙げられるのが、教師が制定過程を詳しく理解しておらず、かつ正しく伝えていないことです。憲法の平和主義の理念ばかりを唱えるのではなく、中国の軍拡や北朝鮮の核開発などの脅威に対処できなくなっている憲法の欠陥も、子供たちに分かりやすく教える必要があるのではないでしょうか。

 こうして教科書が徐々にではありますが健全化の流れの方向に向かいつつあることは有り難いですね。