2007年10月16日火曜日

続・ベトナム研修を終えて

「本橋さん、ベトナムの『国家としての現状』も教えてくださいよ」
「いいとも。だけどこの手の話はお堅いものになるけど・・・」

 先月号で私がベトナムに視察に行ったことはご報告いたしましたが、ベトナムの現状を知りたいという方がいらっしゃったので、つまらないとは思いますがご報告させていただきます。

―――ベトナム社会主義共和国の現状―――
1 人口・・・約8,000万人
2 国土・・・約33万平方キロメートル(日本から九州を除いた面積)
3 GDP/P・・・428ドル(2002年)
4 政治体制
①共産党党員・・・264万人(人口比約3%)。政治局・・・15名。中央委員会・・・148名。書記長はノン・ドゥック・マイン(北部出身)。
②国家主席(元首)はチャン・ドゥック・ルオン(中部出身)。
③行政府首相はファン・バン・カイ(南部出身)。副首相・・・3名。閣僚・・・23名。
④国会議員数・・・498名(任期5年)。議長はグエン・バン・アン。
5 内政
①1986年以来ドイモイ(刷新)政策を堅持。1990年代半ばまで年率8~9%の成長実現。97年アジア経済危機により99年には4,8%まで減速。2000年、6,8%まで回復。2002年、7%。2003年、7,3%達成。2004年は7,5%を目標。
②共産党一党独裁支配の下、思想・表現・情報など厳しく管理。
③地域間・個人間における貧富の格差の拡大や汚職問題などが徐徐に顕在化しつつあるも、着実な経済発展が続く限り、今のところ社会不安の芽は大きくない。
④積極的対外開放政策に基づく観光客の増大がある(1995年約135万人、2002年約240万人)。
⑤外国直接投資などの結果、一般犯罪は増加しつつも、テロ・誘拐などのいわゆる政治犯罪あるいは反政府運動の兆しはない。
6 外交―――戦略的かつ現実的外交の展開
①ASEAN重視・・・アセアンこそは国際社会一般との重要な接点・窓口と認識。
②日本・アメリカ中国・ロシアとの関係を最重要視・・・まずロシアとはベトナム戦争以来の伝統的友好関係のほか、武器体系、人的関係を通じた関係は依然として強力だが、経済面での関係は年々希薄化している。つぎに中国とは歴史的・地理的関係に基づく安全保障上(中越国境問題、南沙問題)及び経済上の観点が強い。さらにアメリカとは1995年国交正常化後、2001年の通商協定締結というように順調に発展(2003年の対アメリカ輸出が飛躍的に増大し、対日輸出を超え№1)。双方とも戦争に起因する憎悪関係はもはや希薄。特に来年はベトナム戦争終結30周年。政治関係は徐々に正常化。ベトナム首相の訪米も俎上に。もっとも民主化問題・人権問題もあり、微妙な距離感が必要。最後に日本とは余計な懸念なしに信頼し、頼れる関係を目指し、ここ数年のベトナム側の対日重要視姿勢が顕著。それは『自然の同盟関係』『戦略的パートナーシップ』と表現される。
――― 以 上 ―――

「なんとなくベトナム国家のイメージがつかめました」
「そう?でも『ベトナム戦争』っていうイメージがまだ強いでしょ」

 日本人はベトナムという国についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。来年はベトナム戦争が終結して30周年となりますが、いまだにこの戦争のイメージが強いのではないでしょうか。ベトナムという国家は既に申し上げたとおり大変な親日国家ですし、日本の国益上、対中国投資に絡むリスク分散先として大きな魅力を持っています。ですから何とか両国がきっちり結び合える『もの』が必要と考えますが、そう思っていた時に私がふと思い出したのがベトナム航空の機体に描かれていた『蓮の花』です。『蓮の花』はもともと仏教の花であり、仏様は蓮の台座に座っておられます。ベトナムは人口の90%は仏教徒であり、しかも東南アジアでは珍しく日本と同じ『大乗仏教』です。またベトナム人は日本人同様「お茶」が大好きで、なかでもベトナム人にとって最も風流な「お茶」のたしなみ方は、「蓮の花のつぼみに溜まった露」、あるいは「蓮の葉っぱに溜まった露」を使ってお茶をたてることです。さらにベトナムで最も愛されているホーチミンは1890年5月19日、ベトナム中部ゲアン省の「ランセン」という村で生まれましたが、この村の名前がベトナム語ではズバリ「蓮の村」という意味なのです。今回訪問したベトナムのイメージが『戦争』から平和の象徴『蓮の花』となることを祈ってやみません。

2004/9/1(水)