2007年10月16日火曜日

「官民格差是正」もホドホドに

「本橋さん。こりゃないですよー」
「ほんと。私たち公務員志望としてはガッカリです」

 私の事務所に通う学生の多くは公務員志望ですが、どうやら彼ら彼女らは、豊島区が向う2年間職員採用をストップしたことが気に入らないみたいです。

 確かに、「自治体」とは、社会的実在として存在し、これを祖先からしっかりと世襲して、未来の子孫に引き渡さなければならず、その大切な担い手を2年間に亘って採用しないと言うことは極めて由々しきことです。採用自体をしなければ、有能な人材との出会いもないわけですし、職員構成も高齢化のピラミッド構造を増幅させてしまいます。

「本橋さん。何とかしてくださいよー」
「そうですよ。私は本橋さんがいる豊島区志望なんですから」

 しかし、平成16年度予算特別委員会における私との質疑応答において、この「2年間新規採用ゼロ」については、理事者として「苦渋の決断」をしたことがうかがえましたし、また公務員それ自体の人員削減は必要であるとの国民合意があると思われる昨今では、豊島区の方針はぎりぎりのところで合理性を見出せると思います。

「えっー、それじゃ本橋さんは公務員の給与削減・勧奨退職も賛成ですか?」
「もう本橋さんの所で学ばないからー」
「そうだー、公務員志望者の敵!!」

 ここまで過激なことを私に向かって言うこの学生達はいったい何者かといいますと、私自身これからは学生の段階で「裸の政治」を見せたい・伝えたいとの想いから、5年前より日本全国から学生を「本学塾(本橋ひろたかと共に学ぶ塾)」塾生として受け入れており、ここで上下関係なしで「裸の政治」を語り合ったりしております。

 今回平成16年春季では8名の若者が私の塾の門をたたき、面接の結果全員合格となり、私の下で政治を学んでおります。(平成18年3月現在、4名)特に、この時期は第1回定例会と重なり、塾生には私が所属している「区民都市整備委員会」「予算特別委員会」のすべてを傍聴させ、彼ら彼女らはそこでの公務員のありのままの仕事振りを見て、「やりがいがある」「時代の歯車を動かす仕事だ」などの感想を私に伝えてきました。塾生たちはどうやら「公務員」と言う職業に感情移入してしまったようです。

 それはそれとしまして、私は「勧奨退職」についてはこの場では言及いたしませんが、「職員給料削減」については一言だけ言わせていただきたいと思います。

 平成八年、厚生省(今は厚生労働省)の汚職事件が発生しました。それは、埼玉県の特別養護老人ホームの建設をめぐって、厚生省内の汚職疑惑が発覚し、業者からマンション購入資金を受け取ったなどとして、岡光序治事務次官(当時)が逮捕されたと言うものです。何故に厚生省の事務次官ともあろう人物が個人的な蓄財に走ってしまい、挙句の果てには法に触れることまでやってしまったのか。そこをしっかりと分析して、今後に展開することが大事だと思います。

 私は、ポイントは昭和61年に行われた「公務員共済組合」の年金の引き下げにあると見ております。改定前の公務員年金は、退職時の俸給が基準となって算定されていましたが、改定によって在職期間の平均俸給額によって決められ、退職時の役職とはあまり比例しなくなってしまいました。加えて、改定前に採用された人の年金も引き下げられたことは、あたかも「遡及処罰禁止の原則」に現れている法の精神にもとると言えます。

 年金を下げられると、公務員としては国家・国民のために懸命に働いたとしても、こと退職後となると悠々自適に暮らせないわけですから、ついつい将来のことを考えて行動してしまうことは無理もないとおもいます。 もちろん、岡光次官の一件は犯罪であり、決して許されるものではありません。しかし、彼を批判するだけでは何の解決にもつながらないと言うことです。

 そもそも日本の官吏に対しては、一般人にはない年金(恩給)が与えられていましたが、これはなぜかと言えば、まさに天下・国家のために老後の心配もなく懸命になって働いてもらえるようにする、私利私欲や下品な立ち居振る舞いをしないようにする。この目的からすれば、公務員の年金を一般の社会福祉の視点で考え、「官民格差是正」という錦の御旗の見地からいじることは如何なものかと思います。

 また、岡光事件をもう少し見てみますと、彼は大体6000万円の蓄財をしたわけですが、そのための手段として、特別養護老人ホームの建設などに絡んで約10億円もの余計な補助金を国家に使わせてしまっております。彼の不正蓄財には10億円の税金が原資となっているわけです。

 このような構図は、いわゆる「特殊法人」への天下りについても言えるでしょう。例えば、天下り先で年間1000万円の給料が支払われているとすれば、オフィスの経費や、お抱え運転手や秘書の人件費と言った具合に、それ以上のお金が使われているわけです。

 汚職や天下りを防ごうとするのならば、公務員が蓄財に走らずに職務をまっとうできる環境を作る必要があります。そのためには、むやみやたらと公務員の給料や年金を下げてはいけません。むしろ大幅な人員削減をしながら、給料や年金を上げる方策を考える方が得策だとおもいます。

「さすが本橋さん、公務員の味方!!」
「私、これからも本橋さんの下で学びます」

おいおい、この上げ下げは何なの?

2004/3/1(月)