2007年10月16日火曜日

街づくり&国づくり

「あっ、安倍さんがしゃべってるー。次は小泉さんだー。」
「なんだ、安部晋三幹事長、小泉純一郎総裁を見るの初めて?」
「そりゃそうですよ。なんてったって、僕達まだ学生ですから」

 平成16年1月16日、第70回自由民主党大会が、JR品川駅西口にある新高輪プリンスホテルで開かれ、かねてより一緒に行きたがっていた学生たちを連れて参加してきました。その日の安倍幹事長の挨拶や小泉総理の演説は、自衛隊のイラク派遣が国論を二分し、かつ秒読み段階に来ていることもあってか、ボルテージがひと際上がったものとなっており、特に小泉総理がしゃべっているとき、前列に陣取っている多数の国会議員が「そうだー」などと合いの手を入れ、会場の雰囲気はいやがおうにも熱くなりました。これらの光景を目の当たりに見た学生たちも党大会の熱気に戸惑っておりました。

「おっ、安倍さんがこっちに来たー。」
「向こうで小泉さんと記念写真が撮れるって、行こう、行こう」

 私自身は党大会には何度も出席しているのと、都連の青年部の副部長をている関係で、党の幹部とは会う機会があるので、取り立てて感動はなかったのですが、初めて参加した学生たちにとってはとても新鮮で且つ刺激的だったことは確かでしょう。第1部の党大会に引き続いて、第2部の懇親会では、会場の一角に小泉総裁との写真撮影コーナーが設けられ、ある学生は一緒に記念撮影をするどころか、小泉総理と握手をして会話も楽しんでくる始末です。それでもここへ来て多くの第一線で活躍している政治家を生で見て、生の声を聞いて、この学生たちは何かをつかんでくれるだろう。私にはない新しい感性でこの時空を捕らえてくれるに違いない。後で話を聞くのがとても楽しみだ。そう思って私はテーブルに陣取って彼らの荷物の見張り役をしておりました。

「いやー、楽しかったです」
「いい思い出になりました」

 この党大会についてどう思ったか後で自由に喋ってもらったときに出てきた彼らの多くの感想です。これ以上は彼らのためにもここでは申し上げることはできません。と同時に、それは常日頃の私の彼らに対する教え方・導き方が悪かったことを意味します。ここで、「なぜ」、と思ってみても仕方がありません。私の学生に対する政治の伝え方の幼稚さに原因があるわけですから・・・・・・・。

 ただ、私が学生たちに期待したことをここであえて申し述べさせていただくと、それは自民党の幹部達の話を聞いて、「この国のかたちをどうするのか」という問いかけへの、彼らなりの挑戦の言葉・言説を聞かせてもらいたかったという点につきます。

 昨年の11月の総選挙を思い起こしてみますと、そもそも政治というものが、国家の基本・土台となるべき事柄に取り組むことが主眼であって、政権公約に関しても、そのためにどうするかが議論されてしかるべきでしょう。その意味では、当時の総選挙における格闘の政権公約は、いかにして濃く見抜けするかが最大関心となってしまっていたのではないでしょうか。公約の1番目が「高速道路の無料化」という占拠というのは、ある意味では異常としかいえません。本来なら、わが国が国際社会の中でどのような役割を果たすのか、その原則をしっかりと明記すること、大きなテーマは憲法改正ですが、9条の解釈をわかりやすいものにし、同時に自衛隊の存在と役割をここにしっかりと位置づけること、そして国家が存続していくためには教育の問題に取り組まなくてはなりません。日本人が持っている粘り強さとか、我慢図よさとか、この持ち味を失ってはならない、その意味で、教育基本法の改正や現場の教育の問題が重要な論点と成っていることです。

 加えて、さらに突っ込んだ議論をいたしますと、あくまでも現実を踏まえたうえで議論を構築してほしいということです。えてして、憲法改正と9条を絡めると、やれ「自分たちの国は自分たちで守ろう」とか、「小型核兵器ぐらい持つことによってわが国も核抑止力を持つべきだ」とかいった議論が出てきてしまいがちです。しかし、わが国のおかれたさまざまな現実を踏まえるならば、「自分たちの国は自分たちで守る」という近代国家の建前を踏まえつつも、これからの安全保障の実態は「自分たちの国は自分たちだけで守れるわけではなく、他国との強調を必要とする」という結論に至るでしょう。テロリズムへの対応は、まさにその典型的な事例です。

 さらに、「この国のかたち」を形成していくに当たっては、もう国民意識の中の「亀裂」めいたものを消して温存させてはならないということです。この典型的な事例が、いわゆる集団的自衛権の問題ではないかと思います。現在の政府公式見解は「集団的自衛権は保有してはいるものの、その行使は憲法上禁止されている」というものですが、これ自体まさに、広範な国民の合意を形成しきれないでなし崩し的にことを進めてきてしまった結果でしょう。現に、その亀裂のせいで安全保障政策の領域で本来は必要とされる選択を下せないという局面がいくつも続いたことを忘れてはなりません。また、内閣法制局に解釈させてしまってよいのかということも大問題です。やはり政治家が直接国民に語るべきです。

「本橋さん、何ぶつぶつ言ってるんですか?」
「別にー、今日は楽しかったねー。これから事務所に帰って勉強しようね」

2004/2/1(日)